咲きも残らず 散りもはじめず

今日見ずは くやしからまし 花ざかり 咲きも残らず 散りもはじめず               ー満開に咲く花を歌った古歌よりー

遠くの赤い風船.2

赤い風船は、街で一番高い通信塔の、そのてっぺんからさらに上にいましたから、赤い風船からは街中の全てが見えました。

街中のみんなの顔が見えました。

おじいさんもおばあさんもおとうさんもおかあさんおにいさんもおねえさんもおとうともいもうとも、みんなの顔が見えました。

けれども、誰も赤い風船をみません。

みんなは空を見上げることをしませんでした。