咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

はざまのカミサマ.外伝観世1

「面をつけるだけで良いのか?」 少年は高い声を出しました。 少年は常に寡黙でしたが、興奮すると高い声を出しました。 「はは。面を、おもて、と呼びます。さらには綺羅綺羅し装束をつけまする」 「その面を依代として、「この世」から他界に渡るのか」 少…

はざまのカミサマ.外伝西行20

榊葉に心をかけんゆふしでて 思へば神も佛なりけり 神社に参拝する折には、 「自分は僧侶の身である」 と遠慮しながら、夜に詣でている西行ですが、 伊勢神宮に参拝した時には、「思へば神も佛なりけり」 という歌を詠んでいます。 そして 何事の おはします…

はざまのカミサマ外伝.西行19

「はざまの世」を垣間見た者や感応した者は、たくさんいました。 その多くは、子どもでした。 そして、その多くは「そんな世界は無い」ということで自分を納得させました. 他人には見えないモノの姿が、自分にだけ見える。 他人には聞こえない声が、音が、…

はざまのカミサマ外伝.西行18

西行は日本人の美意識の中に「漂泊者」として刻まれます。 日は断崖の上に登り 憂ひは陸橋の下を低く歩めり。 無限に遠き空の彼方 続ける鉄路の柵の背後に 一つの寂しき影は漂う。 ああ汝 漂泊者。 過去より来たりて未来を過ぎ 久遠の郷愁を追日ゆくもの。 …

はざまのカミサマ外伝. 西行17

「はざまのカミサマ」が、この世に残そうとしたもの。 それは、この国土や気候、つまりこのクニの自然の生命。 生命の「美意識」だったのかも知れません。 那須与一は、騎馬のまま海に入ると、沖合の波間に揺れる平家の舟に掲げられた扇に、鏑矢を一閃。 与…

はざまのカミサマ外伝. 西行16

仏は常にいませども うつつならぬぞあわれなる 人の音せぬ暁に ほのかに夢に見えたまふ はざまの世は、夜明け前の「かわたれどき」か日没直後の「たそがれどき」に、 「この世」と繋がると言われています。 「彼は誰(かわたれ)時」も「誰そ彼(たそがれ)…

はざまのカミサマ外伝.西行15

西行は孤独でした。 その孤独から抜け出るために「反魂の術」を使って「人造の友」を求めました。 この噂は、そのまま、西行の出家の理由の謎を解く鍵になるかも知れません。 武家貴族の棟梁という良家に生まれ、しかも生家は裕福であった。 美貌の妻と可愛…

はざまのカミサマ外伝.西行14

西行が愛した、桜。 桜は咲いてよし。散ってよし。 と、いわれるます。日本人にとっては「特別な花」です。 「さ」という文字は「穀物の精霊」を意味するといわれ、 「くら」は、カミサマが座る場所を意味します。 よって「さくら」とは、春になり穀物の精霊…

はざまのカミサマ外伝.西行13

歴史上の「特異点」に現れる「はざまのカミサマ」の使徒。 その「はざまのカミサマ」とは、この国土のあらゆるものに宿る精霊、「もののけ」の王。 「何事の おはしますをば しらねども かたじけなさに 涙こぼるる」 「もののけ」の存在を、西行はこう歌って…

はざまのカミサマ51

歴史上には、その流れを変える「特異点」があり、その「特異点」はいわゆる「傑人」によってもたらされます。 「はざまのカミサマ」の使徒は、歴史の「特異点」に現れることは間違いなさそうです。 そして、その目的はどうやらこの国での「唯一絶対神」への…

はざまのカミサマ50

日本人は、 ━世界の東の果てに連なる島々から成る「日本」というクニの住人を「日本人」と呼ぶとして、 日本人は、その歴史の上で、他の民族から征服された経験を持たない、稀有な民族といえます。 さらにいえば、大和朝廷という一つの王朝を、二千年近く戴…

はざまのカミサマ外伝.西行12

西行が「はざまのカミサマ」の使徒であったという証拠はありません。 例えば、安倍晴明などは「はざまのカミサマ」の使徒であった疑いがあります。 なにしろ安倍晴明は、「狐の子」であったという噂がありましたし、 その上、「式神」という「もののけ」のよ…

はざまのカミサマ外伝.西行11

佐藤義清は二十三歳で「突然」出家します。 弓馬の名門、俵藤太藤原家の嫡流という血統。 その名に恥じぬ百射百中の弓の腕前。 天才歌人としての天下の評価。 さらには天皇親衛隊ともいえる「北面の武士』に選抜される端麗な容姿。 そして、美人の妻と可愛い…

はざまのカミサマ外伝.西行10

天下が騒乱するのは、群雄が割拠するから。 そのことは、源頼朝が競争相手の全てを殺し尽くして、自分だけが権力を独占してはじめて「天下静謐」になることで証明されました。 もしも、平清盛が自分や義経を殺していたならば、平家は滅びることは無かっただ…

はざまのカミサマ外伝.西行9

巴御前を、自分が生きた証にしたかった木曽義仲。 義仲と一緒に死にたかった、巴御前。 巴は自分の気持ちを押さえて義仲の命令に従います。 しかし、やはり最期を義仲と一緒にしだかったと後悔します。 巴の無念は巴の死後も残ります。 そんな巴の御魂を鎮魂…

遠くの赤い風船.5

「ああ、あれは病院なんだ.それでね.ほら、あの窓は北向きにある。だから、あの窓からがお日様が見えないんだ。あの窓ぬ向こうには小さな女の子が入院している」 「入院?」 「それで、その子はお前のことを『お日さまの赤ちゃん』と呼んでいる」 「お日さ…

遠くの赤い風船.4

風はめんどくさそうに、ちょっとつむじを巻きながら答えました. 「窓の向こう?何もないよ.いつも街にいるみんながいるだけさ。子どもと大人と老人がいるだけだよ」 風はもうひとつつむじを巻くと、どこかにいってしまいました。 風の後ろ姿を見送って、赤…

遠くの赤い風船.3

「どうして誰もぼくを見てくれないのかな?」 赤い風船には不思議に思えました。 こちらからは、こんなに見ているのに、あちらからは、まったく見ない。 赤い風船にとって、それは大きな「なぞ」でした。 そうそう、赤い風船には、他にも「なぞ」がありまし…

遠くの赤い風船.2

赤い風船は、街で一番高い通信塔の、そのてっぺんからさらに上にいましたから、赤い風船からは街中の全てが見えました。 街中のみんなの顔が見えました。 おじいさんもおばあさんもおとうさんもおかあさんおにいさんもおねえさんもおとうともいもうとも、み…

遠くの赤い風船.1

その街の高い通信塔には、赤い風船がひとつうかんでいました。 今から三年前の夏に、街に初めてサーカスがやってきた時に、その風船は揚げられました。 それからはサーカスもやってきませんし、 他にこれといって嬉しいこともないまま、赤い風船は街の人々に…

はざまのカミサマ外伝.西行8

源頼朝という「武家の棟梁」を前にして、 西行の頭の中では琵琶法師が語る「平家物語」が鳴り響いていました。 平氏の勃興から没落までを語る、語り部の姿が 「琵琶法師」であったことには意味があります。 滅びた人々が去った後には、「無念」が残ります。 …

はざまのカミサマ外伝.西行7

那須与一は、あの「奇跡の矢」で平氏の敗北を決定的にしました。 ┿あの矢を放つ為だけに、那須与一はこの世に現れた、ともいえるやも知れぬ。 頼朝は、精悍さの中に少年の面影を残していた那須与一の顔を思い出しました。 那須与一は二十歳でこの世を去りま…

はざまのカミサマ外伝.西行6

「和歌を作るのは、花や月をみて 深く感動した時に、三十一文字は浮かんでくるだけ 特別な秘訣などは、ありません」 西行は、和歌を作る「秘訣」を訊ねる、そう頼朝に応えます。 「生まれながらの歌人」と評された西行には、「秘訣」などは必要なかったので…

はざまのカミサマ外伝.西行5

「陸奥のいわでしのぶは えぞ知らぬ 書き尽くしてよ 壺の石ふみ」 この歌は、慈円の歌への返歌です。 「思ふこと いざ陸奥の えぞいわぬ 壺の石ふみ 書き尽くさねば」 慈円は、頼朝に亡き義経のことを問います。 しかし、頼朝ははっきりとは答えません。 し…

はざまのカミサマ外伝.西行4

西行と出会う源頼朝とは、どんな男だったのか。 琵琶法師が吟じる「平家物語」の中で、頼朝は 「容貌優美にして言語文明なり」と描かれています。 また、「威勢厳粛、成敗文明、理非断決」という評価もあります。 そもそも源頼朝は「坂東武士の盟主」として…

はざまのカミサマ外伝.西行3

ところで、旅の空にいる西行は、この後に頼朝と出会うことを知りません。 そもそも、西行の旅の目的は、平氏によって焼き討ちにあい、灰燼にきした東大寺の伽藍を再建するための浄財寄進を集めることでした。 史実では、将軍頼朝が鶴岡八幡宮に詣でた折に、…

はざまのカミサマ外伝.西行2

「願わくば 花の下にて 春死なん その如月の 望月のころ」 そう歌った西行は、その頃、鎌倉を目指して旅をしていました。 征夷大将軍・源頼朝の招きに応える旅です。 桓武帝の「天下静謐」は、征夷大将軍坂上田村麻呂が蝦夷征伐を成して「天下布武」がなった…

はざまのカミサマ外伝.西行1

「なにごとの おはしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」 そう歌った西行法師は、かつては「北面の武士」佐藤義清という武家貴族でした。 佐藤、という「藤」の文字が入る氏ですから、西行は藤原氏です。 その藤原氏の中の武家貴族で、「俵藤太…

はざまのカミサマ49

平安を求めるために、四方を神々に護られた都を作る。 さらには、鬼門にあたる叡山の地に、鎮護国家の寺を新設する。 これまでの仏教の経文や呪文に加えて、密教の真言を唱える。 これだけでは、「天下静謐」は得られないことを、 桓武帝は知っていました。 …

はざまのカミサマ48

乱れた天下を静めるために、矛をとめる、つまり「武」を成す。 「天下静謐」のための「天下布武」 桓武帝が、坂上田村麻呂を用いての「天下布武」で、 日本はひとつになりました。 絶対強者である桓武帝の下で、「天下静謐」となります。 しかし、桓武帝によ…