2020-06-19から1日間の記事一覧
その街の外れにある星見やぐらには、星占いのおじいさんが住んでいました。 このお爺さんは、子どもと星がお話をする魔法を使うことができました。 おじいさんは魔法使いだったのです。 人は誰でも空に一つだけ「自分の星」を持っているのです。 おじいさん…
星見やぐらの下に小さなテントがあります。 そのテントの中に下がっている鈴を、リンリンと鳴らすとやぐらの上からおじいさんが降りてきてくれます。 そして、子どもと一緒に星見やぐらを登っていきます。 その街に夕闇が訪れて、おじいさんを呼ぶ鈴の音が風…
それでも、おじいさんの鈴は、時々、小さな手でりんりんと鳴らされました。 おじいさんはその子の手をひいて、星見やぐらを登って行きます。 星見やぐらの上に着いたら、子どもに目をつむらせます。 そうして口の中で呪文を唱えながら、その子の星を見つけま…
子どもにも、確かにそう聞こえたように思えました。 目を開くと、空いっぱいの星です。 その星の中の、どれが自分の星なのかはわかりません。 けれども、「自分の星」が、この空に確かにある。 そのことを信じることができました。 「ありがとう。さようなら…
夜がふけて子どもたちが眠ってしまう頃に、星占師のおじいさんは独りでタバコを一本だけ吸って、コキコキと首を回した後、星見やぐらから降りてきます。 ある夜、おじいさんがタバコに火をつけた時に、りんりんと鈴がなりました。 こんな夜更に子どもが来る…
おじいさんが何度、呪文を唱えても星からの返事がありません。 おじいさんは不思議に思いました。 そんなことは、初めてだったからです。 不安そうな男の子と一緒に、おじいさんは厚い本を調べてみました。 いろいろと調べてみました。 そして、その男の子の…
男の子が魔法使いの弟子になって3年経ちました。 男の子は立派な星占い師になっていました。 星占い師は、引退して別の街に引っ越したおじいさんの代わりに、あの星見やぐらに住んでいました。 けれども、その頃には、星とお話をしたいという子どもは、まっ…
そんなある夜、久しぶりに星見やぐらの鈴がリンリン鳴りました。 魔法使いがワクワクしながら星見やぐらからテントに降りてみると、女の子がひとりで立っていました、 たいていの女の子は、お星さまとお話するのが少し怖いから、お母さんやお父さんに連れら…
女の子の姿が街の灯りに溶け込むと、魔法使いは女の子の星を探し始めました。 自分の魔法に間違えがあったとは思えません。 それで魔法使いは、星に直接尋ねることにしました。 黒いマントに身を包んだ魔法使いは、ほうき星に乗って星から星を巡ります。 ま…
魔法使いは、あらゆる魔法を使って女の子の星を明るくしようとします。 この夜空に、自分の星が無いということがどんなに淋しいことか。 魔法使いは知っていましたから。 まず、星にお花を咲かせてみました。 ダメです、 金色や銀色に塗ってみました。 ダメ…
次の夕方、女の子が星見やぐらに来てみると、鈴のふさに手紙がついています。 「星見やぐらに登ってください」 女の子が星見やぐらに登ってみると、小さなテーブルの上にも手紙がありました。 「北の空の一番明るい星。それがきみの星です。その星はこう言っ…