咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

こうして本ができあがる

エピソード6. 証し

2016年8月 発現してから1年がたった。 がん患者になって1年がたっていた。 「がん患者の中には、あまりにも痛みが強く、長く続くために、『いっそうのこと死んでしまいたい』と思う人がいますが、あなたはどうですか?」 初めての受診の時に、私は子どものよ…

エピソード5. 絶望

がんはステージにもよるが、すぐに死ぬわけではない。 死ぬまでに時間があるはずが、その時間を自ら断ち切る人もいるという たとえば、がん告知を受けた段階で、自殺してしまう人もいるという。 がんセンターの集計では、がん告知を受けた後に自殺してしまう…

エピソード4. 廉恥

私が大切にしてきたものに「廉恥心」というものがある。 恥を知る、ということだ。 例えば、 「泣かない」 「怖がらない」 「期待をうらぎらない」 「あきらめない」 「弱音をはかない」 「前を向く」 「みっともないことをしない」 それらの言葉を糧として…

エピソード3. 悲鳴

がんセンターの外来待合いでのことだった。 老夫婦が罵り合っていた。 罵り合うといっても、おじいさんがおばあさんを叱りつけている。 おばあさんは使い慣れない杖が上手く使えない。 それにおじいさんが文句を言う。 そのおじいさんの罵声が、私には、まる…

エピソード2. 統計学

過去のデータは未来を予測するために便利なものだ 2015年11月。治療を終了して退院した私はいくつかの数字を知っていた 私の身体の部位に、私と同じ大きさの悪性腫瘍ができた者の5年生存率5% 治療をすることで、5年生存率は20%になるが、治ることはない …

エピソード1. エレベーター

「肺がんです。5年生存率5%」 2015年7月のあの日 国立がん研究センター中央病院呼吸器科でそう告げられた時、 私の頭に浮かんだのは、マンションのエレベーターだった。 『棺桶は縦にしか乗らない』 だから、病院で死んで、そのまま斎場に運んでもらいたい…