咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

神さまになったクモ

はざまのカミサマ10 胡蝶7

赤い狐面が舌打ちしました。 その時には胡蝶の精霊は、三狐神の前に、 つまり、はざまのカミサマの世界に戻ってきていました。 見失ってしまったので、赤い狐面の妖力がモンシロチョウに届かなくなってしまったのです。 妖力が届かなくなれば、モンシロチョ…

はざまのカミサマ 9 胡蝶6

「ほう」 あれが、梅の花か。 赤い狐面の従者は、その言葉を飲み込みました。 白い雪が降り積もった枝の上、 白い雪の重なりを割るように、 紅い蕾みがひとつだけほころんでいました。 「潔し」 赤い狐面の隣で、白い狐面がつぶやきます。 青い狐面も紅梅に…

はざまのカミサマ 8 胡蝶 5

モンシロチョウは、ハラハラチラチラと飛び回ります。 モンシロチョウは、いつか雪景色の中を飛んでいました、 「白い雪に白い蝶か」 白い狐面の従者がクスクスと笑いました。 三狐神は胡蝶の精霊が「飛び込んだ世界」を見透かしました。 はざまのカミサマの…

はざまのカミサマ 6 胡蝶 3

青狐面、赤狐面、そして白い狐面の三狐神が どうして胡蝶の精霊をかまったのかは、わかりません。 いつも三狐神は、 通り過ぎてゆく「イノチ」を見つめているだけです。 三狐神の、 いや、すべての精霊の王である「はざまのカミサマ」が無言であるように。 …

はざまのカミサマ 5 胡蝶2

青狐のいうとおり、梅は雪を割って綻ぶ花。 春、夏、秋を舞い遊ぶ胡蝶と出会うはずはありません。 「寒梅とまみえたい、いうことか?」 白狐が胡蝶の精霊にたずねます。 「結べぬはずの縁を、寒梅と結びたいのか」 「私は言葉をかけたいのです」 胡蝶の精霊…

はざまのカミサマ 4 胡蝶1

はざまのカミサマの世界に「イノチ」がひとつ、やってきました。 「イノチ」は、かつては胡蝶の精霊であったといいます。 胡蝶の精霊には、はざまのカミサマにかなえてもらいたい願いがありました。 強い願いや思いを残した「イノチ」は、 「この世」と「あ…

はざまのカミサマ 3

このクニで、狐がカミサマのお使いになったのは、 このクニの人たちがお米を食べるようになった頃かもしれません。 人々は、稲穂と同じ黄金色をしたケモノのことを「特別なイキモノ」だと思いました。 このクニの人々は、あらゆるモノは年を経ると「カミサマ…

はざまのカミサマ 2

はざまのカミサマの世界は、 たとえば、昼と夜のはざまの「黄昏」のように曖昧な世界です。 たとえば、夜と朝のはざまの「夜明け」のような刹那の世界です。 そんな世界に、はざまのカミサマはいつでもいます。 はざまのカミサマには三人のが従者がいます。 …

はざまのカミサマ 1

むかしむかしのこと。 そのクニにはたくさんのカミサマがいました。 そのクニでは、「命はいつかはみんなカミサマになる」と思われていました。 そうです。命があるものとは、人だけではありません。 けものや蛇や虫や草木や花も、時が満ちるとカミサマにな…

さようならの魔法使い 1

あるところで女の子が生まれました。 女の子のお父様は王様で、お母さまはお妃様だったので女の子はお姫様でした。 女の子は色がぬけるように白く、きれいな瞳をした可愛い子でした。 王様もお妃様も長い間待っていた初めての子供だけに、大層喜びました、女…

さようならの魔法使い 2

女の子は、びっくりしました。 けれども、まだ目がはっきり覚めてないからか、あまり怖くありませんでした。それにその男の人のことをどこかで見たことがあるような気がしましたから。 「こんばんは」 「こんばんは」 女の子は、男の人に上手にごあいさつが…

さようならの魔法使い 3

次の朝、女の子が目をさますと、窓は全て閉じられていました。頑丈な鉄格子さえあります。 昨夜のことは、全部、夢だったのかなと思いました。 それで、女の子は魔法使いのことを王様にもお妃様にもないしょにすること にしました。 けれども、その夜も、魔…

夢の街の話  1

バクという動物は夢を食べるといわれています。 ある街の動物園に、新しく、バクが来ることになりました。 小さな動物園で動物の数も少なかったし、みんなは、バクという動物を見たことがありませんでしたから、みんなワクワクして待っておりました。 「バク…

夢の街の話 2

「みなさん」 飼育係さんがそういったとき、マイクがキイ~ンといいました。 「私はバクのことを調べに行ってまいりました。とても長く辛い旅でした」 ここで飼育係さんは大きなため息をひとつつきました。 「私はこの眼でバクを見てきました」 広場に集まっ…

夢の街の話 3

その翌朝、一人の人が目が覚めた時にヘンな気がしました。いつもと同じような朝でしたが、ちょっとだけ違う感じがしました。そんな「ヘンな感じをする」という人が何人もでてきました。 「なんか、ヘンなんですよ」 「そう、なにか、ヘンなんです」 「どうい…

夢の街の話 4

園長さんは、キョトンとしましたが、すぐに真っ青になりました。そして、やっとのことで市長さんに電話で報告しました。 その夜、市長さんの家で、市長さんと園長さんと飼育係さんの三人が会議を開きました。そして、ひとつのことを決定しました。その決定事…

神さまになったクモ 1

神さまになったくも 冬の静かな夜にはこんな話しがあります。 ある所に虫の村がありました。人間の町があるのですから、虫の村もあります。 そして、そこに、クモの仕立屋さんがおりました。この仕立屋は8本の手足を使い、上等の糸で仕事をするのでたいそう…

神さまになったクモ 2

翌日も、昨日と同じ、高い秋空の日でした。 クモさんもケムシさんも、何もなかったような顔をして黙っておりました。 クモさんは、朝早くから忙しそうに仕事をしていました。 誰でも、 悲しいことや、せつないことがあった時には、何かを一所懸命にやるもの…

神さまになったクモ 3

それからしばらくして、音楽会の日がみんなに伝えられました。 いつもの年よりも早い音楽会でした。 音楽会までの問、クモさんもケムシさんもいつもと同じ様に、つまりクモさんは一日に10回はお茶を飲んで、ケムシさんは一日中パイプをふかしてくらしてい…

神さまになったクモ 4

翌日、 がやがやという虫達の声で、二人は目をさましました。 まだお日様が登りきっていないような早い朝でした。 クモさんとケムシさんは何だろうと思って戸を聞けてみると、家の前にはコオロギ君やスズムシ君たちがいっぱい来ていました。 「どうしたんで…

神さまになったクモ 5

それからクモさんは、朝早くから夜遅くまで、ひたすらミノを作りました。 ケムシさんが用意してくれた食事やお茶も、そのまま冷たくなっていることがしばしばありました。 十着目までは、すぐできました。 二十着をすぎて二十八着目になると、それまで赤や黄…

神さまになったクモ 6

その年の冬はとても厳しいものでしたが、それでも春はやって来ました。 バッタ君達が夢にみていたような、素敵な春でした。 春がすぎて、ひまわりの花がまっしぐらに太陽をめざすようになった頃、 バッタ君達の子供が生まれました。 コスモスの花が、 はにか…

神さまになったクモ 7

ケムシさんは、毎日毎日、遠くから聞こえてくる虫達の声に、 みんなのことを思い出して、 そして、クモさんのことを思い出してくらしておりました。 ケムシさんには、たずねてくれる人も誰もいないし、 たずねてゆける人も誰もいませんでした。 ケムシさんは…