咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

エピソード5. 絶望

がんはステージにもよるが、すぐに死ぬわけではない。

 

死ぬまでに時間があるはずが、その時間を自ら断ち切る人もいるという

たとえば、がん告知を受けた段階で、自殺してしまう人もいるという。              がんセンターの集計では、がん告知を受けた後に自殺してしまう人はそうでない人の20倍にあたるという。                                

 

死と向かいあったことで、絶望してしまうのだ

 

絶望してしまった者には未来を描くことはできない。 

絶望するということは、自分の過去も現在も未来も否定されてしまうことなのだ。         

 

死なないつもりで生きている私たちにとって、がん告知とは、絶望そのものなのだ。

 

がん告知という絶望を受けたら、人は冷静ではいられない。

 

私もそうだった。                                             私は自分の肺がんがわかってすぐに、妻に自分の葬儀の指示をしてしまった。                     当時は死の恐怖から目をそらせようとヤミクモに頭を働かせようとしていた。                  

思えば妻はどれ程悲しく、心細かっただろう。                             

がん告知を受けて平静でなかった私は、                                     夫のがん告知を受けて平静でなかった妻を不用意に傷つけてしまった。

 

このように、がん告知を受けた者は、自分が平静でないことに気づかない。            

 

しかし、平静でなかったからといって、自分の大切な人を傷つけてよいはずもない。        しかも、傷つけたことを、あとで悔やむのだ。

 

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人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話