咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

エピソード11. 専門

迷子になっていた私と一緒に迷うことで

私の手をゆっくりとひいてくれた人

それは、「精神腫瘍科医」という聞きなれないものだった。

しかし、「がん専門の精神科医のことだ」私は、そう、理解した

その人は清水研という医師で、国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科科長だった

 

では、清水研医師は、どうやって私の手をひいたのか?

 

「私は何もしていません」

清水医師は必ず、そう答える。

「患者さんは、誰でも同じです、もしも、私が『正解はこうです』と教えたとしても、『そうですか』と、受け取る患者さんは、ほとんどいません」

しかし、重ねて尋ねると清水医師は、こう答えるだろう。

「私は患者さん自身が考えてゆくきっかけになるお話しはできたかもしれません」

 たとえば、患者さんの心に何かがつっかかっているとします。

 患者さんのお話を聞いていると、

『あ、この棒がつっかかっているのではないかな?』

 ということに気づきます。

 でも私は、『この棒がつっかかっていますよ』とはいいません。

 私は、『ここに棒がありますね』というだけです。

 そして、そのつっぱり棒をはずして世界を広げるのは、やっぱり患者さんなんです」

 

 私はこんな清水医師と出逢うという≪幸運≫に恵まれたことになる

 

↓10月19日発売

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話