咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

エピソード17. 団長

私は、私が体験してきたことを伝えるための本を、精神腫瘍学を広める普通の人向けの書籍を作ることにした。

 

とはいえ、物事を実現するためには、いくつものステップが必要だ。

ひとりでは何もできない。

まず、志を同じくする者として清水先生がいる

しかし、志はあってもスキルがなければモノは作れないので、

本づくりそのものは≪作家≫である彼女に託す必要がある。

 ※この時点では、未だ彼女には何の了解も得ていない。

なにより、≪書籍を作る≫という事業の運営を管理するにはマネージャーが必要となる

私は後に≪団長≫と呼ばれることになる親友に、そのマネジャー役を託すことを決めていた。

 

私はミッションを整理した 

・がんになると精神の不安定になること

・≪がん専門の精神科≫ともいえる精神腫瘍科があること

・がん患者も、家族も、サービスを受けることができること

・しかし、精神腫瘍は、その存在自体をあまり知られていないこと

「だから、書籍を通じて知らしめたいんです。ほら、私と清水先生の実体験を記述してもらえば良い」

 

彼は退院した後の落ち込んだ私を見ていたし、

それを乗り越えた今もそばにいてくれている。

私の中で起きた変化の大きさを感じてくれていた。

 

「応援団という≪組織≫を作りましょう」

 彼は、そう提案してきた。

 彼は、いつもそうなのだ。

 彼は、私が期待するはるか上の水準の≪最善解≫を与えてくれる。

「メンバーは、いつもの飲み仲間のチームでもいいけど、≪本作りの応援団≫という組織を作りましょう。簡単な規約を作ってNPOのような組織を作ります。私が事務局長をやれば良い。ああ、奥様には≪顧問≫とかに就任してもらいましょう」

※総務畑を歩いて来た彼は、こういうことがさらさらとできてしまう

 

私は彼の配慮にすぐに気づいた。 

前回の本を作るのに6年間かかったという。

この本ができるまで、私が待っていられるかどうかわからない

 ※2016年夏には、私は5年生存20%の1年目だった

だから、本作りを、自然人ではなく法人のような≪組織≫で行おうといってくれたのだ

 

これならば、私がいなくなっても、本は必ず作られることになる

そして、彼はその≪組織≫に妻を加えようとしてくれていた。

 

こういう男のことを、≪やさしい男≫というのだ

 

 泣きそうになる私にはかまわずに、≪応援団長≫が晴れやに笑う。

「では、さっそく、作家さんに相談にいきましょう」

 

 

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人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話