咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

エピソード.20 始動

 私の≪精神腫瘍科伝えたいプレゼン≫が終わった時、≪作家≫はいった。

「『がんの本は、売れない』っていわれているんですけどね」

 それは≪作家≫ではなく、≪出版プロデューサー≫としての彼女の言葉だった

 

 伝えることは、ほんとうに難しい

 私はそう思った

 私は、がんの話をしていない

 それでも、「がんの話」になってしまうのか

 

 というものの、私の話は

 「≪精神腫瘍科≫×≪死生観≫×≪能楽≫の本を書いて欲しい」

  というもので

 「日本一多くのがん患者の話を聴いている精神科医

           ×

 「世界文化遺産能楽重要無形文化財

  と、トッピングを盛りすぎて、本来の風味を損なってしまいそうではあったが

 

 私は≪足し算≫をしていけば良いと考えていた。

 良いもの、スゴイものを足してゆけば、素晴らしものができる

 

 そうではなかった。

 そして、彼女はそのことを知っていた。

 

「取材をします。できるだけ、急ぎます」

 ≪作家≫はいった。  

 

 2015年6月24日にがんであることが≪発現≫して

 2015年12月に、精神腫瘍科医清水研と≪邂逅≫

 そして

 2016年8月に、≪私≫は、≪私たち≫になり、ようやく本作りが≪始動≫した

 

 ≪作家・稲垣麻由美≫が始動した

 こうして本はできあがり始めたのだった

 

 

 まずはじめに取材を受けたのは、私だった

 一人になった私は、彼女に尋ねられた

 それは、思いがけない質問だった

「何故?生きることをあきらめているのですか?」 

 

 

↓10月19日発売

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話