咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

エピソード.22 希望

父親として、妻や子のお荷物にはなりたくない。

 リアルなお父さんの気持ちとしては、そうでしょうね」

  ≪作家≫は、けして否定はしない。しかし、≪作家≫は明言する

 

「それでも、人が読みたいのは、≪希望の書≫です」

 

 がんの本が売れないのは、簡単な理由だ。

    ハッピーエンドではないからだ

 人が苦しみぬいて死んでゆく姿を、お金を払って読みたい人は少ない

 

 だから、がんでもハッピーエンドの本を作る必要がある

   

 私が抱える≪進行性肺がん≫は、5年生存率が低い病気だった

 そのことを受け容れるための道のりを本にしたかった

 私は、精神腫瘍学や能楽で≪死生観≫を手に入れた

 その≪死生観≫があれば、おだやかに死を受け容れることができる

 私の希望は、≪おだやかに逝くこと≫だった

 私が清水先生と歩んだ道のりをたどれば、おだやかに逝くことができる

 ≪おだやかに逝くための道のり≫を描いた本

 

 なるほど、これでは、誰もが描くハッピーエンドのようには思えない

 

「つまり、≪おだかやに逝くとはどういうことなのか?≫と、いうことですよね」

 ≪作家≫が確認する。

「≪がんでもハッピーエンドの本≫にするための、鍵なのでしょう」
 
 ≪作家≫は取材後、私にルールを与えた
 
 想いが溢れる時には、溢れるままに言葉にして、作家に宛ててメールを送る

 

 ≪作家≫が決めたこのルールで、それからの私は救われることになる

 

 2018年の秋。痛みが酷くなりはじめていた

 身体の中心部。その奥から発する痛みは≪命を断ち切る痛み≫のように思える

 痛みで呼吸が苦しくなることが、死を連想させるのだ

 

 死は、いつもそばに居る

 

  ここまでの道のりは、精神腫瘍医・清水研が一緒に居てくれた

 これからの道のりは、作家・稲垣麻由美も一緒に居てくれることになった

 さらには応援団さえも居てくれる

 

 私はひとりでいることから救われつつあった

 

↓10月19日発売

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話