咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

エピソード.24 賛歌

能楽師金井雄資師への取材は、能楽堂でおこなわれた

 

能楽とは死者と生者の邂逅である」

 かつて、能楽師は、そう語った。

 能楽の中でも≪夢幻能≫の登場人物は≪死者≫である場合が多い。

 

「想いを残して逝った者が、想いのたけを語って成仏するという。

 お能とは鎮魂の演劇でもあるわけです」 

 

≪草木国土悉皆仏性≫(そうもくこくどしっかいぶっしょう)という言葉を教えてくれた

「ありとあらゆるものに、≪仏性≫が宿っていると。だから≪成仏≫できる」

 

「鎮魂の歌ということは、賛える歌ということでもあります」

 命を尊いものとして扱うからこそ、鎮めもするし讃えもするのだ

 

 能楽師は誇り高くいう

 

お能とは、日本人の生命賛歌なのです」 

 

 ≪生来の日本人≫は、旺盛な生命力を持っていた

 

 美しい生はあっても、美しい死はない、という事を知っていた

 だから、どうすれば、生き残ることができるのか

 それだけを考えて行動した

 だからこそ、≪乱世≫になった

 生き残るために裏切りあいが続いたからだ

 生き残る為には、何でもアリだったからだ 

 中世とは、室町から戦国の世とはそんな時代だった

 

 それらの善悪をさておいて、室町の時代からお能という演劇は演じられている

 善も悪も、あらゆるものに仏性がある 

 善も悪も、あらゆることに物語がある

 お能という演劇は、その物語を音楽とともに演じて伝えてゆくのだ

 

 まさに、生きとし生きる者の生命賛歌だ

 

 私と作家は、能舞台へと誘われる

 命あるもの全ての生命賛歌が演じられる能舞台で、

 私は≪死生観≫を見出すことになる 

  

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