咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

リロード6. 逆行

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「千賀さんが、今、成功していないと思っているのならば、                            

 元に戻っている、ということになってしまいませんかね」

 

 かつての私は、未来や成功にしばられていた

 そのことが病気になった自分を責めた

 私は病気になった私を責めた

 私は泣いた

 私は苦しんだ

 私は奈落の底でおびえていた

 私は、迷子になってしまっていた

 私は、逃切りたいとも思っていた

 

 迷子になった私の手を引いてくれたのが清水先生だった

 

 そんな私が辿り着いたのはある≪境界≫だった

 

 今を今のために生きる

 今を未来のためにだけに使うべきではない

 今は今なのだ、と今を生きる

 

「だから、あの≪朝のハグ≫がみんなの共感を呼ぶのでしょう」

 清水先生がいう≪朝のハグ≫とは「人生でほんとうに大切なこと」の 

 ━第七話 がんになったおかげで、生まれ変わることができた━ 

 の冒頭に描かれている、病気になってからの私の日課だった

 

 いつか来る別れの時におびえて暮らすより、

 一緒にいられる日々を想って暮らしたほうが楽しい

 

 そう想えるようになるまで、清水先生が私と一緒に迷子になってくれた

 

 そんな私が、≪成功≫などと口走るようになっている

 私は≪逆行≫しているのではないか 

 

 清水先生の問いに、私は答えを探していた

 

 

 

「人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話」