咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

リブート6. 奇跡

「千賀くん?!」

オープンカフェにスカして座っていた私を、大学の同級生が偶然通りがかりに発見してくれた。 

彼女はこのカフェのご近所にお住まいなのだ。
 「元気そうでよかった」
彼女は、いつもと同じように喜んでくれた。

「私が入院した時からずーっと祈り続けてくれている友人だ」

偶然にドギマギした私は同席している妻や友人に紹介する。

そして彼女と手を取り合って偶然の再会を祝福する。

握手したその手を振りながら、彼女は言った。
「今夜は満月よ」
颯爽と去る黒ずくめの彼女は、広尾の夜に溶けて行った。


そうか満月か。

満月が来ると、あの日々を思い出す。

私の入院中、彼女たちは満月に私の平癒を祈ってくれていた。

祈りのメールやメッセージを送ってくれていた。

─こんなに祈ってもらって、死ななかったらどうしよう

そんなことを心配していた日々があった。

そんな彼女との偶然の出会い。
満月がプレゼントしてくれた小さな奇跡かも知れない。 

小さな奇跡のおかげで私はとても幸せな気分になった。

幸せな気分のおすそ分けができればいいな。

きれいな満月が、見えたらいいだろうな。

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