このクニで、狐がカミサマのお使いになったのは、
このクニの人たちがお米を食べるようになった頃かもしれません。
人々は、稲穂と同じ黄金色をしたケモノのことを「特別なイキモノ」だと思いました。
このクニの人々は、あらゆるモノは年を経ると「カミサマ」になると思っていました。
このクニの人々は、自分たちの周囲に「カミサマ」がいて欲しいと思っていました。
このクニの四つの季節をめぐる自然の力は、人々にとって恐ろしいものです。
その自然の力のことを人々はカミサマの力であると思いました。
人々は、イキモノは年を重ねると「カミサマ」に近づいてゆくと思っていました。
ですから、年を重ねた黄金色のケモノを「カミサマ」のお使いだと思ったのです。
あらゆるイノチがカミサマになるこのクニで、そのカミサマたちの王が「はざまのカミサマ」です。その「はざまのカミサマ」のお使いが「狐面」をつけていたのには
そんな理由がありました。
「はざまのカミサマ」と狐面のお使いたちは、黄昏色の世界で静かに待っていました。
次のイノチが、「この世」と「あの世」の「はざまの世」に入ってくる時を。