咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

はざまのカミサマ 16 胡蝶

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冬蛾の物語を聞いていた赤い狐面が、鼻を鳴らします。

春、夏、秋の命と

春、夏、秋、冬の命。

そこにどれだけの違いがあるというのか。

三狐神の一員である赤い狐面は、

この「はざまのカミサマの世」に、

いつからいるのかを憶えていません。

いつからか、

赤狐面は、青狐面や白狐面と一緒に結界を張って、

黒狐面がお守りする「はざまのカミサマ」の世をお守りしていました。

ただ、時折、こうして「この世の物語」を聞かされた時には、自分の過去の記憶をぼんやりと思い出しました。

「泣いておる。赤狐め」

白い狐面は黙って赤い狐面を見ないようにします。

白狐が青い狐面に視線を巡らせると、

青狐は冬蛾を見つめていました。

白い狐面は、冬蛾に集中している青い狐面の

心の中をのぞいてみます。

三狐神たちは、妖力を使って他人の心を覗き見ることができます。

とはいえ、妖力が強い相手の心の中は、簡単には覗けません。

しかし、どんなに妖力が強い者でも、スキがあれば心の中を覗くことができます。