「なにごとの おわしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」
いつか、神霊の気配に気づいた者が歌に読んだように、
神様も仏様も「この世」とつながっています。
ですから、「はざまのカミサマ」も、「この世」とつながっています。
なにしろ、はざまのカミサマは、「この世」と「あの世」との「はざまの世」に「おわします」のですから。
このクニの全ての人たちは、神様や仏様を信じるようになっても、はざまのカミサマのことを忘れませんでした。
西から神様や仏様がはいりこんで来た時に、
はざまのカミサマは、東に移りました。
東西に伸びるこの島クニの東北に、だんだんと移って行きました。
はざまのカミサマが動いたわけではありません。
はざまのカミサマを信じている人たちが、東に移ったので、はざまのカミサマが移ったように思われたのです。
はざまのカミサマを信じていた人たちが、
神様や仏様を信じる人たちから、攻められたこともありました。
神様や仏様を信じる人たちは、はざまのカミサマではなく、はざまのカミサマを信じる人たちが邪魔になったのです。
そして何度もイクサがありました。
はざまのカミサマを信じる人たちは、散り散りになりました。
けれども、たとえ、信じる人が攻め滅ぼされても、
このクニの人の心に「はざまのカミサマはおわします」
青、赤、白、黒狐がお守りしているからだけでなく、
このクニのすべての人たちが、はざまのカミサマを心の底でお守りしていたのです。