咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

はざまのカミサマ外伝.田村18

f:id:syukugami:20200328183129j:plain

平安京で恐れられていた悪霊とは、なんと早良親王の霊でした。

親王禅師」との畏敬を受けていた早良親王は、

その無念の死への人びとの同情と、

親王を死に追い遣った者たちにうしろめたさ、

さらには高僧であった親王の法力への畏敬から、

平安の都を大きな妖力で祟る大悪霊として、あらゆる人から恐れられていました。

ただ、ひとりを除いて。

坂上田村麻呂は、そんな悪霊の結界となった平安城に、蝦夷の二大酋長、アテルイとモレを連れて来たのです。

田村麻呂は、蝦夷征伐の勝利の証である二人を平安京まで連れてきたら、すぐに蝦夷地に連れて帰れるつもりでした。

しかし、田村麻呂が思いもよらないことが起こります。

宮廷内の人々が、二人の酋長の首を斬れと騒ぎ出したのでした。

「そんなことをすれば、二人は間違いなく悪霊になる」

田村麻呂は反対します。

田村麻呂はアテルイとモレに「命の保証」をしてきました。二人を斬首などにしたら、田村麻呂の面目は丸潰れになります。

それよりなにより、蝦夷地は一斉に蜂起するでしょう。

大和朝廷への怒りと蔑みと共に。

しかし、宮廷の高官たちまでも二人の斬首を主張します。

「まさか、桓武帝のご意向か」

田村麻呂は、混乱してしまいました。

蝦夷地に早良親王の霊を探せと命じられたこと。

しかし、早良親王の霊は都で悪霊と恐れられていること。

その上に、蝦夷の二大酋長を斬首して新しい悪霊を生み出そうとしていること。

「新しい悪霊」

田村麻呂の頭の中で、何がちかと光ります。