咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

はざまのカミサマ外伝.田村21

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「なんじは、我らを生かしておきたいことだろう」

アテルイの言葉に田村麻呂はうなずきます。

征夷大将軍である坂上田村麻呂には、戦争に勝つというだけでなく、戦後処理を成功させる任務があります。

そして、勝者が戦後処理を成功させるには、敗者の代表者が必要となるのです。

敗者の代表者が、敗者である蝦夷の民をしっかりと統率していれば、勝者である田村麻呂は、代表者とのみ交渉すればすみます。

しかし、敗者の代表者が不在であれば、勝者を敗者を直接支配しなければならないことになります。

そして蝦夷地という「敵地」の中で、勝者が直接支配するとなると、圧倒的な軍事力を維持することが必要となるのです。

軍事力の維持とは、本来ならば生産者である民を、兵士として占領地にはりつけることになってしまいます。

アテルイとモレという大酋長の二人を生かして、「敗者の代表者」とすれば、田村麻呂は最小の軍事力で蝦夷を統治する自信があります。

何故なら、二人は絶対的な統率力を持っていたからです。

そして、田村麻呂が二人を生かしておきたい理由が他にもありました。

それは、田村麻呂がアテルイとモレに好意を持ってきた、ということでした。