御霊神となった早良親王の名を挙げたならば、
その兄である桓武帝の名を挙げないわけにはいきません。
とはいえ、聖徳太子から桓武帝、早良親王に連なる血統は、天津神の最高神である天照大神の血統です。
天津神や国津神は、この島国に地生えの「もののけ」を退治した立場です。
しかしながら、神に連なる血統には、強い霊力、あるいは妖力が宿るともいわれます。
この島国にとって「異邦人」であった、天津神の末裔や、渡来人の中で妖力の強い者たちは、「はざまの世」を感知する能力を持っていたのでしょう。
その能力は、かつては、この島国に住む全ての人が持っていました。
しかし、米という美味で栄養価が高く、保存することが可能な食物を得る生活を続けるうちに、その能力は記憶と共に薄れていってしまいました。
それでも、「はざまの世」を感知する能力を持って生まれる者は現れます。
その中には様々な呪術や祈祷の力で、もののけに関わりを持とうとする者も現れます。
そんな者たちは、何故か「天下布武」が成される前に現れます。
いえ、そんな者たちが「天下布武」を成すために現れるのでしょう。
この島国に「天下静謐」をもたらすことで、
この島国の森羅万象の生命賛歌を咲かせるために。