風はめんどくさそうに、ちょっとつむじを巻きながら答えました.
「窓の向こう?何もないよ.いつも街にいるみんながいるだけさ。子どもと大人と老人がいるだけだよ」
風はもうひとつつむじを巻くと、どこかにいってしまいました。
風の後ろ姿を見送って、赤い風船はため息をひとつ落として、また、窓の灯りをながめます。
いつものみんなが居るだけだというあの窓の灯りを、団長さんはなぜ「見てはいけない」と厳しくいうのでしょうか。
赤い風船は、カラスのおじいさんにもたずねてみました。
このおじいさんは、街のいろいろな所を飛び回っていて、物知りで有名なカラスでした。
赤い風船は、団長の話もオマケとして付け加えました。
「さあて、窓の向こうのなぞはワシにもわからんなあ」
カラスは赤い風船の周りをくるりと飛んでいいます。
「それより、お前のことを見ている子どもがいたぞ」
「ぼくを?」
赤い風船はびっくりしました。
「ああ。お前を」
「ぼくを?」
「ああ、あの白いビルだ」
「なぜだろう?」
赤い風船は、もう、びっくりしてしまっていました。