「ああ、あれは病院なんだ.それでね.ほら、あの窓は北向きにある。だから、あの窓からがお日様が見えないんだ。あの窓ぬ向こうには小さな女の子が入院している」
「入院?」
「それで、その子はお前のことを『お日さまの赤ちゃん』と呼んでいる」
「お日さまの赤ちゃん?」
「色が白くてね。笑うと目がほそおくなるんだよ。いつもひとりで折り紙ばかりやっているよ」
カラスは思い出し笑いのようにクスクス笑ました。
「でも、ぼくは『お日さまの赤ちゃん』なんかじゃないのにな」
赤い風船は、なんだか自分がウソをついているような気持ちになりました。
「さあて、夕焼け小焼で日が暮れるよ。ワシは帰るからね」
カラスのおじいさんは、また、赤い風船の周りをくるりと飛びました。
「ワシの経験では、いつでも見てくれる誰かがいることは、幸せなことだよ」
カラスは西のハゲ山の方に飛んでいってしまいました。
西のハゲ山は、秋の夕陽に暮れ染まっていました。
「はは。『お日さまの赤ちゃん』か」
赤い風船は、くすぐったそうに小さく笑いました。