咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

遠くの赤い風船.2

赤い風船は、街で一番高い通信塔の、そのてっぺんからさらに上にいましたから、赤い風船からは街中の全てが見えました。

街中のみんなの顔が見えました。

おじいさんもおばあさんもおとうさんもおかあさんおにいさんもおねえさんもおとうともいもうとも、みんなの顔が見えました。

けれども、誰も赤い風船をみません。

みんなは空を見上げることをしませんでした。

 

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「神さまになったくも」著:千賀泰幸画:金井雄資