それからクモは、ひたすらに、
ミノを作りに作ります。
十着まではすぐできます。
二十をすぎて二十八にもなると、
色とりどりだったミノは、
枯葉の色になりました。
ある夜、ひとり村長が、
クモの様子を見に来ました。
手を止めないクモに代わり、
ケムシが戸口で相手をします。
「教えてください、村長さん」
小さな声で、ケムシがいいます。
「もしも、ミノが間に合わなければ、
クモさんはみんなに恨まれませんか?」
さらに声を落とします。
「運命を変えたりしたら、
カミサマの罰があたりませんか?」
ケムシは思い切っていいます。
「本当はぼくがいったのです。
『ミノがあれば』といったのはぼく。
だから、恨みや罰ならば、
ぼくが受けるべきなのです」
村長がうなります。
「そうか、なるほど、あのミノは、
ケムシくんの言祝(ことほぎ)か」
そして、にっこりいいました。
「大丈夫。恨みも罰も何もかも、
全部私が引き受けます。
『みんなで一緒に』といったのは私。
何より私は村長だから」
黙ってしまったケムシに、
村長が笑って続けます。
「ケムシくん、クモさんを頼みます。
私たちの希望なのだから」