咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

リブート9. 雑音

人生でほんとうに大切なこと」にも描かれていたが、

痛みは薬によってコントロールする。

いつまでも痛みが続くのだから、いつまでも服薬が続く。

「疼痛コントロール」の副産物として「眠気」や「注意力低下」が起きている。そんな私は緩和ケアの担当医に睡眠薬の種類を替えることを提案された。

「但し、清水先生に判断していただき、処方していただきます」

 清水先生に緩和ケアの担当医の提案を伝えると、清水先生は3年間飲みつづけた薬に替わる、新しい薬を処方してくださった。

 その薬を飲んだ夜。私はなかなか寝つけなかった。

──寝つけない薬は困る。

 寝返りを繰り返しながら、悪態をついていた私は、いつしか眠ってしまっていた。

 翌朝、私はいつにない熟睡からスッキリと目覚めた。

 しかし、私は疲労困憊だった。

 しっかりと熟睡した感じはある。しかし、まったく休んでいないような…。そう、脳が休んでいないような感じがしていた。

 眠っている間は1秒の休みもなく夢をみていた。

─思えば、この3年間、私は夢をみていなかった。

睡眠薬の中には、「夢とは睡眠中に脳内で発生するノイズのようなもの」との定義で、ノイズをとり除く=夢を見させないように設計されているものがあるらしい。

 そして、私が服用してきたのは、そのタイプの薬だった。

 この3年間、私は眠り落ちてから目覚めるまでの間に、時間の隙間を感じたことはなかった。

 そんな私が夢を見た。

 3年ぶりに夢をみた。

 たくさんたくさん夢をみた。

 それは長く果てしなく繰り返される情報の海のようなものだった。

私は怖かった。

私は清水先生に相談して、元の薬を処方していただいた。

私はまた、夢を見ないで眠るようになった。

今は、薬の種類を替えるのではなく、量を減らすことを試みている。

迷った末に、このことを書くことにした。

私が、いつかまた、夢を見て眠る日が来るように。

私が「雑音」を聞き分けることができますように。

そんな、いつかを待つために。

 

100万回生きたねこ 佐野洋子 作・絵」は、退院してから購入した絵本だ。

 

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