咲きも残らず散りもはじめず

タイトルは満開に咲く花を歌った古歌より

はざまのカミサマ10 胡蝶7

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赤い狐面が舌打ちしました。

その時には胡蝶の精霊は、三狐神の前に、

つまり、はざまのカミサマの世界に戻ってきていました。

見失ってしまったので、赤い狐面の妖力がモンシロチョウに届かなくなってしまったのです。 妖力が届かなくなれば、モンシロチョウの姿を保つことができません。

「あの花に、伝えることがあります」

胡蝶の精霊がつぶやきます。

「あの紅梅に間違いないか」

青い狐面の従者がたずねます。

胡蝶の精霊は紅梅と出会うはずがないのです。

胡蝶は、春、夏、秋に舞遊び、冬が来る前に死んでしまう生きもの。

紅梅は、生きものたちが沈黙した冬を割って、

春を招く花。

なのになぜ、胡蝶の精霊は、あの紅梅と縁があるようにいい張るのか。

そして、胡蝶の精霊は、紅梅に何を伝えたいのか?

「私も知りたい」

白い狐面が青い狐面にいいました。

「ならば、ちと、力を貸せ」

赤い狐面が、青と白に笑いかけました。

三狐神が、妖力を放ちます。

三狐神が、妖力重ねます。

縦、横、斜めから重なって編まれた妖力が、

胡蝶の精霊を包み込みます。

淡い光の中で羽ばたいていた胡蝶の精霊は、

いつしか、漆黒の羽を広げた揚羽蝶の姿になっていました。