咲きも残らず 散りもはじめず

今日見ずは くやしからまし 花ざかり 咲きも残らず 散りもはじめず               ー満開に咲く花を歌った古歌よりー

星の魔法使い11

次の夕方、女の子が星見やぐらに来てみると、鈴のふさに手紙がついています。

 

「星見やぐらに登ってください」

 

女の子が星見やぐらに登ってみると、小さなテーブルの上にも手紙がありました。

 

「北の空の一番明るい星。それがきみの星です。その星はこう言っています。

「いつでも、いつまでも、きみをみているよ。きみが幸せになるのをみているよ」

きみの星は今夜しか見ることはできません。そんな星と今夜出会えたことを、幸運であると思ってください」

 

女の子は北の空を見上げます。

今まで見たことのない明るい輝きが、そこにはありました。

女の子はとても幸せな気持ちになりました。

 

女の子が握りしめた手紙の端には、こう書かれていました。

「きみのおかげで、ぼくも幸せになることができました。ありがとう」

 

北の空の輝きは、少しづつ弱まっているようでした。

 けれども大丈夫。女の子が眠りにつくまでは、きっと輝き続けることでしょう。

それが魔法使いの最後の魔法使ですし、魔法使いというのは、そういうものなのです。