「いつから、私はこの姿になった?」
黒狐は自分の両肩を抱きながら思います。
「いつから、彼らはここにいる?」
黒狐は、青、赤、白狐を見回します。
彼らは、手を伸ばせば触れることができそうなほどの近さにいるように見えます。
けれども、手を伸ばしてもけして届くことはありません。
この島々が「瑞穂の国」と呼ばれるようになったころ
彼らは狐面をつけるようになりました。
狐はその毛色が稲穂の色に似ていることから、
「田の神様の使い」とみなされます。
黒狐は、それ以前の自分の姿を憶えていません。
ただ、はざまのカミサマにお仕えしていた。
そのことだけは知っていました。