咲きも残らず 散りもはじめず

今日見ずは くやしからまし 花ざかり 咲きも残らず 散りもはじめず               ー満開に咲く花を歌った古歌よりー

星の魔法使い5

夜がふけて子どもたちが眠ってしまう頃に、星占師のおじいさんは独りでタバコを一本だけ吸って、コキコキと首を回した後、星見やぐらから降りてきます。

 

ある夜、おじいさんがタバコに火をつけた時に、りんりんと鈴がなりました。

こんな夜更に子どもが来るなどということはありません。

その音がひどく弱々しいものでしたから、おじいさんは風の音だと思います。

ところが、鈴の音がまた聞こえました。

おじいさんが星見やぐらから降りてみると、男の子がひとりで立っていました。

 

男の子はおずおずと、自分の星とお話しをさせてくれるように頼みました。

おじいさんは、男の子の身体にいくつかアザがあることに気がつきました。

おじいさんは、星とお話をしたがる子どもたちが、昔よりも暗い目をしていることに気づいていました。

おじいさんは男の子を連れて星見やぐらに登ります。

夜空は晴れわたっています。

おじいさんは小さく呪文を唱えます。

ところが、おじいさんが呪文を唱えても、星からの返事がありません。