そんなある夜、久しぶりに星見やぐらの鈴がリンリン鳴りました。
魔法使いがワクワクしながら星見やぐらからテントに降りてみると、女の子がひとりで立っていました、
たいていの女の子は、お星さまとお話するのが少し怖いから、お母さんやお父さんに連れられてくることが多いのです。
けれども、その女の子は一人でやってきました。
色が白くて髪が長くて可愛い子でしたが、瞳が淋しそうに見えました。
魔法使いは、女の子の手をひいて星見やぐらに登ります。
もう、二等星までは見えるくらいに空は暗くなっています。
かすかな風が女の子の髪を揺らします。
魔法使いは呪文を唱えます。
ところが返事がありません。
久しぶりなので緊張したのかと繰り返し唱えますが、夜空は沈黙したままです。
そのうちに晴れていた夜空は、いつの間にかうっすらと曇ってしまいました。
「今夜は曇ってしまったから、また明日いらっしゃい」
魔法使いにそう言われて、女の子はこくりとうなずいて微笑みました。
そして女の子は、キラキラと灯が灯り始めた街に帰っていきました。
魔法使いは大きく手を振って女の子を見送ります。