咲きも残らず 散りもはじめず

今日見ずは くやしからまし 花ざかり 咲きも残らず 散りもはじめず               ー満開に咲く花を歌った古歌よりー

カミサマになったクモ・13

 クモの仕事は続きます。

 今、クモだけが、みんなの運命を変えることができるのです。

 クモはもう夜もほとんど眠らずに、仕事ばかりしておりました。

 いよいよ四十着を過ぎると枯れ葉は固くなってしまっていて、クモの仕事ははかどらなくなりました。

 固いケムシの毛針さえも折れてしまいます。

 その都度、ケムシは新しい毛を、体から引っこ抜いて差し出します。

 クモは手に血をにじませながらミノを作り続けました。

 それでも、クモは、楽しくて楽しくてしかたありませんでした。

 だって、クモは、みんなに希望を持たせることができたのです。

 クモはミノを作り続けました。

 四十六着目がやっとできた夜遅く、村に初めての雪が降りました。

 仕事に夢中だったクモは、雪には気がつきませんでした。

 ただ、今夜はとても寒いと思っただけでした。