ケムシは、クモを葬りました。
「クモさん。ぼくは、まだまだ、ケムシのままだよ」
ケムシはそれから、バッタを、トノサマバッタを、みんなを葬りました。
ケムシは虫たちの亡き骸を、小石や木の葉のない剝き出しの地面に横たえます。
それが、虫たちのお弔いです。
やがて、虫たちの亡き骸は、地中の世界の生きものたちによって、土の中に還ります。
空の虫も地上の虫も、そして、地中の虫さえも、その亡き骸は地中の生きものの命を繋ぐ糧となるのです。
この時期の亡き骸は、特に地下の生きものが冬を越すための、大切な命の糧となるのでした。
ケムシは、みんなの亡き骸の上に、ミノをおきます。
「ミノムシさん、ぼくらは、こんな運命だったみたいです」
ケムシは、広場の真ん中の樹の枝からぶら下がって眠っている、ミノムシを見上げていいます。
ミノムシはゆらゆら風に吹かれています。
こうしてケムシは、また、ひとりぼっちになりました。