咲きも残らず 散りもはじめず

今日見ずは くやしからまし 花ざかり 咲きも残らず 散りもはじめず               ー満開に咲く花を歌った古歌よりー

春のカミサマ.11

 いつしか秋の最後の満月の夜。 

 外の声に気づいたケムシは、

 閉め切っていた戸を開きます。

 

 空には満月と満天の星。

 蒼い月明かりのその下に、

 

 村のみんなが並んでいました。

 みんなはミノを着ています。

 

 トノサマバッタがお辞儀します。

 あの村長の娘です。

 

 「ケムシさんとクモさんに

  聞いてほしくてやって来ました。

  父母が歌った『別れの歌』でなく、

  ミノのおかげの『祝いの歌』を」

 

 娘村長がそういうと、

 バッタの息子の指揮に合わせ、

 みんな一斉に歌います。

 

 ケムシは、空を仰いでいいました。

「聞こえますか?この歌が」