咲きも残らず 散りもはじめず

今日見ずは くやしからまし 花ざかり 咲きも残らず 散りもはじめず               ー満開に咲く花を歌った古歌よりー

春のカミサマ.8

 それでも時は流れます。

 

 それでも、春はやって来ます。

 

 その春がゆき、夏が来る頃、

 虫の子供たちが生まれました。

 

 虫の子供たち、

 みんな合わせて四十七匹。

 

 撫子の林の影で、

 子供たちが遊んでいると、

 枯葉の山を引きずって、

 毛針の怪物が現れました。

 

 子供たちは怪物を、

 恐る恐る取り巻きます。

 

 その怪物はいいました。

 

「これはカミサマからのお祝いだ」

 

 それだけいって怪物は、

 もと来た方へと去りました。

 のろのろのろのろ去りました。

 

 怪物の姿が見えなくなると、

 みんなで枯葉の山を囲んでは、

「これは何か」

 とがやがやざわざわ。