2023-12-10 春のカミサマ.7 春のカミサマ そこは、一面の銀世界。 村には昨夜の初雪が、 薄く積っておりました。 戸を閉めたケムシは、 村長の家へと急ぎます。 それからバッタの家へ。 そして、みんなの家にも。 ケムシの歩みは全身で、 のろのろのろのろ進みます。 ですから、ケムシが帰ってきた頃は、 夜が始まるたそがれ時。 「クモさん、間に合わなかった」 戸を開けたケムシが見たものは、 最後のミノを抱いたまま、 動かなくなったクモでした。 ケムシはひとり泣きました。 たくさんたくさん泣きました。 空から雪が降ってきて、 何もかもを埋めました。