咲きも残らず 散りもはじめず

今日見ずは くやしからまし 花ざかり 咲きも残らず 散りもはじめず               ー満開に咲く花を歌った古歌よりー

神様になったくも.4

それからしばらくして、音楽会の日がみんなに伝えられました。

いつもの年よりも早い音楽会でした。

音楽会までの問、クモさんもケムシさんもいつもと同じ様に、つまりクモさんは一日に10回はお茶を飲んで、ケムシさんは一日中パイプをふかしてくらしていました。

村は音楽会のうわさでもちきりでした。

指揮者のバッタ君などは、どこの家でも歓迎されました。みんなは音楽会をとてもたのしみに待っていたのでした。

いよいよ音楽会の夜がやって来ました。

空いっぱいの星の下で音楽会は始まりました。

クモさんもケムシさんもミノムシ君も、みんなも来ておりました。

 バッタ君をはじめとして、マツムシ、スズムシ、クツワムシにコオロギ、ウマオイ君たちもいます。みんながみんな一所懸命に歌います。

 

みんなはとても一所懸命だったので、みんなはとても美しかったのです。

 

月が傾きかけた頃に音楽会は終りました。

みんなはそれぞれの家へ、いろんなおしゃべりをしながら帰って行きました。

クモさんとケムシさんは、黙って月夜の道を歩いておりました。

月がきれいだね」

「ああ、まんまるだ」

  クモさんはため息まじりにいいました。

「運命なんだね」

  ケムシさんがぽつりといいました。

 クモさんもケムシさんも、バッタ君たちとお別れするのが悲しかったのでした。

 みんなが大好きなのでした。

 クモさんとケムシさんは、蒼くのびた月夜の道をゆっくりと帰って行きました。