それからしばらくして、音楽会の日がみんなに伝えられました。
いつもの年よりも早い音楽会でした。
音楽会までの問、クモさんもケムシさんもいつもと同じ様に、つまりクモさんは一日に10回はお茶を飲んで、ケムシさんは一日中パイプをふかしてくらしていました。
村は音楽会のうわさでもちきりでした。
指揮者のバッタ君などは、どこの家でも歓迎されました。みんなは音楽会をとてもたのしみに待っていたのでした。
いよいよ音楽会の夜がやって来ました。
空いっぱいの星の下で音楽会は始まりました。
クモさんもケムシさんもミノムシ君も、みんなも来ておりました。
バッタ君をはじめとして、マツムシ、スズムシ、クツワムシにコオロギ、ウマオイ君たちもいます。みんながみんな一所懸命に歌います。
みんなはとても一所懸命だったので、みんなはとても美しかったのです。
月が傾きかけた頃に音楽会は終りました。
みんなはそれぞれの家へ、いろんなおしゃべりをしながら帰って行きました。
クモさんとケムシさんは、黙って月夜の道を歩いておりました。
「月がきれいだね」
「ああ、まんまるだ」
クモさんはため息まじりにいいました。
「運命なんだね」
ケムシさんがぽつりといいました。
クモさんもケムシさんも、バッタ君たちとお別れするのが悲しかったのでした。
みんなが大好きなのでした。
クモさんとケムシさんは、蒼くのびた月夜の道をゆっくりと帰って行きました。