神様になったくも.5
その翌日も素晴らしくいいお天気でした。
真赤に染った木の葉に柔らかな秋の陽がさしておりました。
「おはようございます」
ミノムシ君がにこにこしながらやって来ました。
昨晩帰りがおそかったので久しぶりに朝寝坊をしてしまったクモさんは、朝のお茶の用意をしているところでした。ケムシさんも目さめのパイプにタバコをつめていました。
「おはよう」
クモさんも、ケムシさんもにっこり笑ってミノムシ君にあいさつしました。
「なんだか音楽会が終ると、本当にすぐ冬が来るみたいな気がしますね」
「そうだね、今もクモさんとそろそろ冬じたくをはじめなければ、といってたところさ」
「ははは。ところでクモさん、ぼくの冬じたくはできてますか?」
「ああ、もうできあがっているよ」
ミノムシ君のお茶を持って来たクモさんが、にっこりといいました。
「昨晩は、その、よかったね」。
ケムシさんがゆっくりと煙を吐いて、ミノムシ君にいいました。
「ええ、みんな一所懸命でしたからね」
「そうだね。みんな本当に一所懸命だったね」
「はい、おまちどおさま」
クモさんがきれいにつくろったミノをミノムシ君へ渡しました。
「いやどうもすみません。このミノのおかげで冬が越せるもんですから」
「けど今年は冬がきびしいそうだから、私にもひとつミノを作ってもらおうかな」
ケムシさんが笑いながらいいました。クモさんも笑いました。
「そうだね、私たちもミノがあれば楽に冬がこせるかもね。 ミノがあれば誰だって」
そういってクモさんはハッと気づきました。
「そうだ、どうして今まで気づかなかったんだろう。 ミノだよ。ミノがあればバッタ君達も冬がこせるかもしれない。」
ケムシさんもミノムシ君もびっくりしましたが、クモさんの話しを聞いて、なるほどと思うと、なんだかワクワクしてきました。